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archiveつかstorage 恥の極み
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  【一歩手前】


「…に~のみや♪」

「大野さんっ!!!」

背後に尻尾が見えるような様子で、二宮がすっ飛んできた。

「よ、よぉ。…こないだ、ごめ」
「大野さ~ん♪元気だった?!今日は1人?!1人で俺に会いに来てくれたの?!?!?!?!」

「…(滝汗)あ、お、おぅ、…俺、別に子どもじゃねぇし。1人で動けるんですけど…(汗)」
「だ~よね~♪あんな過保護な奴、ほっといて、二人で仲良くしよぉ~♪」

「…仲良く、って…(汗)」
「何か、飲む?♪」

「……とりあえず、手、放して?(汗)」
「えーーーーーーーーーなんでーーーーーーーーーー!!!」

大野が力いっぱい押しのけるようにして、ようやく二宮を引っぺがした。

「…ふぅ…えっと…こないだ、悪かったな」

「いいのいいの♪もういいの♪コブ無しで来てくれたんだもんね♪」

「コブ…(酷)

ねぇ。もうちょっと松本にも優しくしてやれねぇの?」
「やだ」即答かよ…

「だいたいさ。なんであんな濃い奴。どこがいいの?」

「…俺がいいってんだから、いいじゃん」

「はぁ…あなたに関して唯一納得のいかないところだわ。」

「……あいつ、めちゃくちゃ人気あるし(以下自粛)…何がいけないわけ?」
「あなたのこと独り占めにしてるっ」

「(ため息)飯、いこっか。」
「はーい♪はいはいはい♪」

「(苦笑)出て待ってる」
「すぐ片付けますっ」

二宮が一応仕事を放りだしたまま席を外さない自覚だけはあったので、

大野は先に部屋を出た。

と。

カウンターの向こうに櫻井がいるのを見つけた。

「あ。」

何やら呆然としていた彼がパッと目を輝かせたのを見て

とっさに大野は知らん振りするように目で制した。

あんまりショックを受けた顔してるから、

学科教習の時間割が掲示してある場所をちらっと見た

(…覚えてるかな?)

時々ハッとするほど鮮明に蘇ってくる、ほんの僅かな時間。

その度に不安になるのに、まだ話し足りない…

まだ話さなきゃならない…

話したい…


…また、会いたいな…


そう思う一歩手前で、頭から振り払ってしまう毎日に

それがなんなのか

ちゃんと知りたかった。


納得いかないのは、嫌だ。

自分の事が自分でわからないだなんて

あり得ないから。



  【理由】


いつものように教室を早めに出て、上に向かう。

いるかな…?いるだろうな…?


いたら…


いいな…?




いた。


大野が階段を上っていく足音を聞きつけたらしく、

緊張した面持ちで階段を見ている櫻井が目に入ってきた。

その目が大野を認めた瞬間にパァ…っと表情を輝かせたのを見て、

はっと胸を突かれた。

そんな自分に慌てて、声に出した。

「いたね」

どうしてこんなにこの人が気になるのか。

(…そりゃ、俺のせいでこの人に迷惑をかけているからだろ…)

その『俺のせい』の部分については、ほとんど自覚がない。

だから周り(別名:スパンコール)が心配するのだという自覚も、もちろんない。

大野が櫻井に予約の具合を尋ねると、案の定言葉を濁した。

きっと彼もまだ、どういうことなんだかわかってないんだろう。

(あぁ…悪いことしたな…やっぱ、俺のせいだよな…)

このことを何と説明しよう?

こうして二人でいる所を見られたりしたら、さらに過保護ぶりが加速する。

(なんでかなぁ?櫻井さんは別に俺に対して何もしてないと思うんだけど…)

この人に嫌な思いをさせたくないな…

この人が困ったりするのは嫌だな…

そう思っていると、櫻井が言った。


「メールさせていただいても、いいですか?」


その一言を言う為にものすごい労力を使ったかのような、

力んで紅潮した顔を不思議そうに見ていた。

なんでこの人は、俺をこんなに戸惑わせるんだ?

話したけど…短すぎて、結局わかんねぇよ…

ということは。


「…いいよ」


だってわかんねぇんだもん。

だからしょうがないんだよ。


もう一回会わなきゃ。

会って

話をしてみなきゃ。


理由があるんだよ。

ね、潤。
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tororo
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tororoが某所で書いていたお話を移築。誤字・変換ミスの訂正や、もともと文字数制限などで割愛した箇所だけを補足しています。基本はそのまま。恥ずかしい。
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